こんな質問をいただいたので、ちょっと考えてみました。
私はクライアントさんのお話を聞くと、共感し理解していく憑依型タイプなので、お話を聞いているとそのうち表現の方向性が見えてくることが多いです。しかし、それは関係性をある程度築いてきたお相手だから、と思うことも多々あります。
このご質問が「提案力をあげたい」、という相談だとしたら、私などよりもっともっと上の方で大活躍されている方の書籍などを教科書として参考にされた方がいいと思います。
市井の1デザイナーが普段大事にしていることで、これを読んでくださっている方のお役に立てば、ということで書いてみました。私はまだまだですよ、という前提でお話します。
クライアントさんの思いを汲み取るために知っておくといいだいたい3つのこと
1.クライアントさんがどんなお客様に届けたいと思っているかを知る。
1つ目は
クライアントさんがどんなお客様に出会いたいと思っているか?
かと思います。
お客様の先のお客様が、同じ「30代女性」だったとしても、
- 首都圏に住む小さなお子さんのいる専業主婦の方
- 都会で働くキャリア志向の高い会社員のシングルの方
- ハンドメイドで何かムーブメントを起こしたいローカル在住の女性起業家
- 脱サラして農業と副業で地方移住を考えているDINKS家庭
上記4人でもまったく思考も行動も違うのは、ご理解いただけるかな?と思います。
クライアントさんがどんな方にどんなお話をよくするのか?は、
参考にする上で大事な資料として参考にしています。
最近はこのようなペルソナ設定よりも、
自分がどう強く"好き"や"やりたい"にコミットしているかを発信すると自然と共感する人が集まってくる、というSNS発信時代ならではの可能なやり方もあります。
私としてはどちらにしても像の密度をギュギュっと濃縮していくやり方、と思っています。
その際、やはりペルソナ設定やターゲット層をお伺いできると、制作やデザインの表現にも自ずと道筋がついてきますので、
そこは大事な資料としてあれば必ずお伺いしています。
2-1.クライアントさんが何を大事にしているか?を知る。
クライアントさんがもっとも熱く思いを込めた言葉で語ってくださることが多いのが、ミッションや思い、大事にしていることです。
今までの思考や行動の足跡を辿ったりして、
どんな選択を重ねてらっしゃったかを発見できると制作の参考になります。
私の場合は、デザインのトーンや雰囲気についての考えはいったん傍に置き、お客様の広報係、の先の"イタコ"として思いをお聞きしています。
ご自身の身に起きた事、ご家族のできごと、また、今まで出会った方々の影響、逆にどうしてやめなかったか、社会への課題意識など、たくさんの想いに裏付けられたストーリーをお聞きすることができます。
クライアントさんがどんな思いでそのお仕事を提供したいと思っているか。ここが共感ポイント(憑依ポイント)としてとても大事に考えています。
お話の出せる範囲が限定的な場合はそこに集中するつもりでお聞きします。
2-2.ヒアリングで大事にしているのは空気感。
お相手の声、話し方、選ぶ言葉、目、表情、体調、お洋服の雰囲気も含めていろいろな情報を多分全体的に得ています。
例えば雰囲気は柔らかいけど決定は即断タイプ、だとか、実務の決定権は実はトップリーダーの右腕の方だとか、そういう情報も、やはり人と接するとなんとなくわかってきます。
のちの提案の進め方にも関わってくる部分です。
2-3.鳥になる。蟻になる。
あまり感情の部分を共有しすぎると、役から抜け出せない役者さんのようになり自他の境界線が消え兼ねません。自分の中のイタコ係がしっかり共感する役割を務めたら、クリエイティブ(制作物)を冷静な目で判断するため、あとは自分の中の他の役割、、そうですね、冷静な分析家や、アーティスト、一般的な評価の目、進行係たちの意見を聞き、表現の落とし所を決めていきます。
よく言われる、主体客体の往復というやつです。
ミクロとマクロの視点、鳥瞰図的な視点、幽体離脱ともいいます。
3-1.思いを形にするのに、デザイナーはパイプでしかない。と思っています。
若い頃はデザイナーの"個性"を出すことにこだわった時期もありますが、ある時期からは逆にそれをいかに捨て、シンプルに考える方が大事だなと思うようになりました。というのも、我や"個性"は捨てようとしても捨てきれない、もしくは捨てたと思った後に残るもの、だと思っているからです。
3-2.クライアントさんの"好み"は、その先のお客様に伝えるべきこととイコールではない、とひとまず思っておきます。
好み。
こちらは一応、という姿勢でお聞きします。
発信したい情報の内容とクライアントさんの個人的な好みがにぴったりでしたら、そのままGoでいいと思います。
例えば、企業案内をするカタログ。
ビジネスライクな颯爽とした雰囲気のデザインであるべきところを、社長さんはいつもオフには山登りへ出かけるので、カタログもアウトドアな開放的で自由なカジュアルトーンがいいですよね、とはならないです。
クライアントさんの個人の趣味が発注内容とコンセプトがあっていない、ならば、その先の利用者にとって重要な情報と受け止めてもらえないです。そういった場合、ご意見汲み取り後、反映する蛇口の太さを絞ります。つまり、ちょっと生かす、程度にしておきます。
3-3.デザイナーの好みも、お客様に届けるべき印象とは違うもの、と扱っておきます。
また、
逆に「デザイナーさんに頼むとその人の個性、好み、に染まってしまうのが心配」、というクライアントさんにとって、気になっているのは過去の事例です。過去の事例ではドーンと元気なトーンが多く見えるけれど、この人に静かで洗練された雰囲気のものはお願いしても作れないんじゃないか?と心配になるのです。
ですが、その過去の事例は今目の前のクライアントさんが発注した事例でしょうか?違いますね。
過去事例は過去のクライアントさんの思いが形になった結果です。
今、クライアントさんは目の前にいます。
目の前のお客様がやりたい方向性と近い方向性の資料を提案し、確認していくのです。
「今回のデザインの方向性はこの資料のような感じであっていますか?」
そうするとクライアントさんの中で大体やりたいものが判明してきます。
資料は、当然ですが、ターゲット層に響くデザインであるものを揃えておくことで、
その先のズレを少なくすることができます。
クライアントさんご自身にも腑に落ち、手応えのある方向のものを一緒に選べます。
まとめ
要するに、クライアントさんの情報をよく受け取って、それがその先にいらっしゃるお客様に響くものは何かを整理して、方向性をつけていくという段取りを踏んでいくことをしています。
迷いながら書いた記事となりました。また書き直すこともあるかもしれません。何か参考になったでしょうか?
言葉の切れ端でも読んだあなたの何かに響き、役立つものにつながっていると嬉しいです。